ソザイヂテン VOL.4 えんとつ町のプペル
絵本「えんとつ町のプペル」
西野亮廣
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「信じぬくんだ。たとえひとりになっても」
父の言葉より
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4000メートルの崖にかこまれ、 そとの世界を知らない町がありました。 町はえんとつだらけ。 あたまのうえはモックモク。 くろい煙にとじこめられて、 あおい空を知りません。 |
夜空をかける配達屋さんが、 煙をすってせきこんで、 うっかりおとしてしまいました。 |
心臓は、町のはずれのゴミ山におちました。 ゴミがあれこれくっついて、 ついに生まれたゴミ人間。 口からガスが、プスーハッハ。 とってもくさいゴミ人間。 |
町にいくと、バケモノたちがウヨウヨ。 「なんだいキミは?」 ハロウィンの夜をあやしくてらす。 |
いろんなバケモノたちが ゴミ人間のところにあつまってきました。 |
バケモノたちのなかまにくわわったゴミ人間は トリック・オア・トリート。 おやつをよこさないとイタズラをするぞ」と 家々をまわり、 風船をプレゼントしてまわりました。 浮かんで、こどもたちは、おおよろこび。 |
「ハロウィンはたのしいね。 またあしたもやろうね」 ハロウィンはきょうまでだぜ」 つぎつぎにマスクをぬぎはじめます。
それぞれでてきました。 |
「どうしたんだよ、おまえもぬげよ、 ゴミ人間」 あなたもいやでしょ?」 でした。 |
「コイツ、仮装じゃない!」 |
ゴミ人間のうわさはすぐに町じゅうに ひろまりました。 「ニオイがうつる」 プスーハッハと くさいためいきをこぼしました。 |
「キミがうわさのゴミ人間か。 ソレ、仮装じゃないんだって?」 ふりかえれば、体じゅう“スス" だらけの 少年が立っていました。 にげようとはしません。 キミは?」 そうだなあ、 ……ハロウィンの日にあらわれたから、 キミのなまえはハロウィン・プぺルだ」 |
「だれもあそんでくれないんだよ」 ルビッチはワハハとわらいました。 キミはきたないし、それにずいぶんくさい」
「ルビッチはボクをさけないね」 ぼくがすてたパンツでも まじってんじゃない?」 |
ルビッチはプぺルの体をすみずみまで 洗ってくれました。 ニオイはずいぶんマシになりました。 ガスだよ。みがいたってムダだね」 |
「あなた、きょう、 あのゴミ人間とあそんだの?」 プぺルはわるいやつじゃない」
「ねえ、母ちゃんは父ちゃんの どこがよかったの?」 うれしいことがあると、 すぐにこうやって ひとさし指で鼻のしたをこすって」 |
プペルとルビッチは、 えんとつのうえにのぼりました。 「しっかりつかまっていれば、へいきさ。 だけど突風がふくから、おとしものには 気をつけてね」 銀のペンダント。 のこっていないのに、 さがしてもみつからなかったんだ」
「ねえ、プぺル、 『ホシ』って知ってるかい?」 だからぼくらには、みることができないけど、 光りかがやく石っころが浮かんでるんだ。 千個、一万個、もっともっと」 ウソっぱちだろ?」 その『ホシ』をみたんだ。
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ある日のこと。 いったいなにがあったんだい?」 ゴミがとれています。 |
つぎの日、ルビッチはアントニオたちに かこまれてしまいました。 たおれたんだよ。 ゴミ人間からもらった バイキンが原因じゃねえのか?」 バイキンなんてない!」 きのうもあのゴミ人間はくさかったぞ。 空気をよめよ。おまえもコッチに来い」 |
「ねえ、ルビッチ。あそびにいこうよ」 そのせいで、ぼくはきょう、 学校でイジメられたんだ。 いくら洗ってもくさくなる キミの体のせいで!」 もうキミとはあそばない」 |
それから、ふたりが会うことは なくなりました。 体を洗うこともなくなり、 どんどんきたなく、 どんどんくさくなっていきました。 あるしずかな夜。 「どうしたんだい、プぺル? ぼくたちはもう……」 |
たどりついたのは、ひともよりつかない砂浜。 船には数百個の風船がとりつけられました。 いいました。 |
「……父ちゃんはうそつきじゃなかった」 うめつくされていました。 |
「あのね、ルビッチ。キミが失くした ペンダントを、ずっとさがしていたんだ。 ながれつくからさ、
「プぺル、そのせいでキミの体は…… ぼく、あれだけヒドイことをしちゃったのに」 |
キミが『なつかしいニオイがする』といったときに気づくべきだった」 「キミが探していたペンダントはココに あった。ボクの脳ミソさ。 コレだったんだね。 そういって、プぺルがペンダントを ひきちぎろうとしたときです。 |
「ダメだ!」 このペンダントはキミのものだ。 そのうちアントニオたちにちぎられて、 みることができなくなる」 「まいにち会おうよプぺル。 そうすれば父ちゃんの写真もまいにち みることができる。 また、まいにちいっしょにあそぼう」 |
「やめてよルビッチ。はずかしいじゃないか」 こすったのでした。 |
「……ごめん、プぺル。 ぼくも気づくのがおそかったよ。 そうか、……そっか。 日だったね」 わかったよ」 「会いにきてくれたんだね、父ちゃん」 |